Classici giapponesi con furigana
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いえ
家
島崎 藤村
Leggi 家 (いえ) di 島崎 藤村 (しまざきとうそん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 141.411 caratteri · 285 schermate
おそらく彼亡き後には、彼が家の為に尽したことに就いて、同情を寄せる人もあるであろう、と話した。豊世には、長く家に居て、母や幸作を助けるように――何一つ幸福な思もさせなかったことを気の毒に思う、とも話した。どうかすると彼の調子は制えることの出来ないほど激昂したものと成って行った。それが戯曲的にすら聞えた。両手で顔を押えながら聞いていた豊世は、夫の口唇を霑してやった。
「正太さん、どんな心地がしてるものかネ」
三吉は甥の寝台の側へ寄って尋ねた。名古屋へ着いて三日目の午前の事である。
「私は今、何事も思いません」と正太は両手を白い掛蒲団の上へ力なげに載せて、大きく成った眼で三吉の方を見た。「唯……どうかするとこう、脆く行って了うようなものじゃないか……そんなような気はしています……」
幾干もない自己の生命を、正太は自覚するもののように見えた。その日は沈着いて、言うことも平常と変らなかった。
乾燥した空気は病室の壁に掛けてある額の油絵まで明るく見せた。微かな心地の好い風も通って来た。玻璃窓の外には、遠く白い夏雲を望んだ。三吉は窓の方へ行って、静かな病院の庭を眺めて、復た甥の枕許へ来た。