Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

ja-reading.com

Leggi i classici giapponesi online con furigana. Filtra per livello JLPT, tocca una parola per il significato e traduci una frase.

あいよあい

愛よ、愛

岡本 かの子

Leggi 愛よ、愛 (あいよあい) di 岡本 かの子 (おかもとかのこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 46.138 caratteri · 99 schermate

Aozora Bunko

その味覚を味う舌が身体中のどこに在るやら判らなかったけれど味えた。「伝十郎」とまるで人間の名のように呼ばれるこれ等の桃の名を憶い出して可笑しくなった。私は、あはあは声を立てて笑った。

冷たいものがしきりなしに顔に当る。私は関わずに、すぼめて逆さに立てた蝙蝠傘を支えにして、しゃがんで休む。傘の柄の両手の上に顎を安定させ、私は何かを静かに聴く。本能が、私をそうさせて何かを聴かせているらしい。桃林の在るところは、大体川砂の両岸に溢れた軽い地層である。雨で程よく湿度を帯びた砂に私の草履は裸足を乗せてしなやかに沈んで行く。「すと」「すと」花にたまった雨の澪の砂に滴る音を聴いていると夢まぼろしのように大きな美しい五感交融の世界がクッションのように浮んで来て身辺をとり囲む。私の心はそこに沈み込んでしばらくうとうととする。

こういう一種の恍惚感に浸って私はまた、茶店の美少年の前を手を振って通り、家の中二階へ戻る。私は自分が人と変っているのにときどきは死に度くなった。しかし、こういう身の中の持ちものを、せめて文章ででも仕末しないうちは死に切れないと思った。机の前で、よよと楽しく泣き濡れた。