Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

Leggi 新書太閤記 (しんしょたいこうき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 185.353 caratteri · 371 schermate

Aozora Bunko

「小熊ッ。小熊ッ」

折もよくその時。

たしかに半兵衛重治と覚しき声が童子を呼びたてていた。

童子は、その声に、びりっとした身ごなしで、

「――はいッ」

藤吉郎を置き捨てて、厨から奥へ駈けこんで行ってしまった。

なかなか戻って来なかった。そのうちに竃の上の大鍋から焦げくさい匂いが漂いだした。

他人の喰べる物とは思われず、藤吉郎はあわてて蓋の上の杓子をつかみ、大鍋の底をかきまわした。干栗や乾菜などが交じっている玄米粥であった。貧乏性とよく人に笑われたりするが、彼は貧農の家に生れたので、米つぶを見ると、母の汗を見るごとく、おろそかに思えなかった。侍になった今でも、茶碗の飯に向うたび、中村の母が思い出された。

「どうしたのだ、あの童子は。……焦げる、焦げる。こいつはいかん」

有り合う雑巾を取って、焼けている大鍋のつるを掴んで持ち上げた。そして竃のわきへ下ろしかけた時である。火の中の竹のふしでも刎ねたように――ずどんッ……と鉄砲の音が壁土をゆさぶった。

音に驚いて、竃小屋の暗い隅から、栗鼠やら鼬やらはしこい獣の影が、もんどり打って外へ逃げた。――が、藤吉郎は、大鍋をのぞいたまま、及び腰になって粥の底をなおかきまわしていた。