Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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にっき

日記

宮本 百合子

Leggi 日記 (にっき) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 65.193 caratteri · 131 schermate

Aozora Bunko

よくよく事情を尋ねて見ると、彼は斯う答えた。

「私は、始めから盗心があって斯様なことを仕たのではありません。この両三日、まるで食うものが絶え、何ともひだるくて堪らないので、始めて思いつき、お宅に入ったのです。

すると、あの棚に、麦粉らしいものがのって居ります。もの欲しいままに、掴み食いはしましたが、餓えた口が、少しずつ味をわきまえるようになると、始めてそれが灰であったと判り、流石に私もあとはたべずにやめました。

食物でないものをたべたのですが、これが腹に入ったら、不思議に、がつがつした心持はやみました。思えば、此程の飢に、何も食べられなかったからこそ非道な心持になったので、灰を食べても雑作なくなおって仕舞った哩と感じ、取った物も、元の通り戻したのです」

主は、哀れにも、不思議にも感じ、かたの如く施物などを与えて、帰してやった。そして、後々にも、それほど途方に暮れた時には、憚らず来て云えと云って、常に安否を問ねてやった、と云う

主の心も美しいが、世に此盗人ほど清らかな魂を持った者が幾人居るだろう。わたくしども、紛々たる論議に、幼児の聖純を失った俗輩は、深く打れるところがある。