Classici giapponesi con furigana
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つきのまつやま
月の松山
山本 周五郎
Leggi 月の松山 (つきのまつやま) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 20.451 caratteri · 41 schermate
彼は突然その唇を醜く歪め、桂のほうは見ずに奥へ去った。
半刻ほど経ってから、孝也は母屋へいった。
寝ている信高の夜具の側に桂がいた。彼女は掛け夜具の下へ手を入れて、父の足をさすっていた。孝也が挨拶をすると、信高は枕の上でこちらを見、眼で頷いた。顔色は蒼黒く、骨のように痩せて、おちくぼんだ眼だけが大きく、生きている証拠のように、慥かな光りと動きをもっていた。――掃部介信高は一昨年の冬、卒中で倒れた。そのときは軽症だったが、半年ほどしてまた倒れ、こんどは半身が不随になった。それで病状に諦めをつけたのだろう、孝也に桂をめあわせて、茂庭の跡を継がせることにした。まだ表立って披露はしていない、孝也と桂の二人に承諾させ、披露の準備をしているうちに三度めの発作が起こり、全身不随になったまま寝ついた。
信高が婚約のことを心配していることは、孝也にも桂にもよくわかった。信高は口がきけなくなった代りに、自分の要求を眼で表現するようになり、桂もそれを理解することにすばやく慣れていった。七歳のとき母に死なれてから、ずっと父の側で寝起きしていたし、父の身のまわりの世話もして来たので、父の眼の動きを見てなにを求めているかを判断するのに、それほど暇はかからなかった。