Classici giapponesi con furigana
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やなぎばしものがたり
柳橋物語
山本 周五郎
Leggi 柳橋物語 (やなぎばしものがたり) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 104.300 caratteri · 202 schermate
――庄さんは帰って呉れないかしら。
心ぼそくなるとよくそう思った。
――去年の地震や火事のことを聞かなかったのかしら、あんなにひどかったのだもの、上方へだって評判がいった筈だのに、もしも聞いたとしたら、せめて手紙ぐらい呉れてもいい筈だのに。しかしそのあとからすぐ自分を叱った。
――手紙のやりとりなどすると心がぐらつくから当分は便りをしない、そっちからも呉れるな、いつかはっきりとそう書いて来たじゃないの、二人が早くいっしょになるために、あのひとは脇眼もふらず働いているんだわ、つまらない愚痴など云っては済まないじゃないの。
秋風の立つじぶんから、おせんは足袋のこはぜかがりを始めた。まえに仕事を貰った家の親店だそうで、御蔵前に店があった。火事からこっち皮羽折や皮の頭巾を作ることがたいそう流行したため、皮が高価でまわらず、足袋は木綿ひといろであったが、仕事は追われるほどあるし皮よりも手間が掛らないので、子供の相手をしながらでも粥ぐらいは啜れる稼ぎになった。――寒さがきびしくなり、朝な朝な霜のおりる頃に、おせんは仕事を届けにゆく道で思いがけない人に会った。