Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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やなぎばしものがたり

柳橋物語

山本 周五郎

Leggi 柳橋物語 (やなぎばしものがたり) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 104.300 caratteri · 202 schermate

Aozora Bunko

八

「半鐘が鳴っているんじゃあないか」

と云った。おせんも耳を傾けた。たしかに、暴あらしく吹きたける風に乗って、微かに遠く半鐘の音が聞えている。然もそれが三つばんだった。

「近いようじゃないか」

「ちょっと出て見るわ」

おせんはひき返して、着物を上からはおり、雨戸を明けて覗いてみた、凜寒と冴えわたった星空のかなたに、かなり近く赤あかと火がみえた。おそらく本郷台であろう、煙が烈風に吹き払われるのでかがりは立っていないが、研ぎだしの金梨地のようなこまかい火の粉が、条をなして駿河台のほうへ靡いていた、おせんは舌が硬ばり、かちかちと歯の鳴るのを止めることができなかった。

「……大丈夫よお祖父さん、高いところだからたぶん本郷でしょう、風が東へ寄っているので、火は駿河台のほうへ向いているわ」

「地震のあとで火事か、今年の暮は困る人がまたたくさん出ることだろう」源六はゆらゆらと頭を振った、「……さあ、風邪をひかないうちに寝るとしよう」

八

横にはなったが眠れなかった。風はますます強くなるようすで、雨戸へばらばらと砂粒を叩きつけ、ともすると吹き外してしまいそうになった。そのうちに表で人の話しごえが聞えはじめた、