Classici giapponesi con furigana
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やなぎばしものがたり
柳橋物語
山本 周五郎
Leggi 柳橋物語 (やなぎばしものがたり) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 104.300 caratteri · 202 schermate
こっちへ越して来てから数えるほどしか会っていない、ずいぶん久しぶりだったし、こころ淋しいときだったので、とびついてゆきたいほど懐かしかった。けれども、すぐにお祖父さんから聞いた話を思いだし、つとめてあたりまえなさりげない挨拶をした。お蝶のほうでも縁談のことなどが胸に閊えているのだろう、昔ほどには親しいようすをみせず、ほんの暫くいたきりで、見舞いの包を置いて帰った。……おらくは夕食を済ませてもういちど来たが、客もなし用事もみつからないので、茶を一杯すすると間もなく去り、おせんはようやく一人になった。
源六の容態は少しも変らなかった。意識がないので薬の飲ませようもなくただ濡れ手拭で頭を冷やすほかにはなにも手当のしようがなかった。午後から熟睡したので、幾らか気持はおちついてきたが、一人になって、昏々と眠っているお祖父さんの顔を見ていると、かなしさ心ぼそさが犇ひしと胸をしめつけ、身もだえをしたいほど息苦しくなった。
「庄さん」おせんは小さな声で、西の方を見やりながらそう囁いた、「……あなたはなんにも知らないのね、なんにも、あたしどうしたらいいの、お医者にもかからなければならないし、薬も買わなければならないし、これからどうして生きていったらいいのかしら、庄さん、おまえが今ここにいてお呉れだったらねえ」