Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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やなぎばしものがたり

柳橋物語

山本 周五郎

Leggi 柳橋物語 (やなぎばしものがたり) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 104.300 caratteri · 202 schermate

Aozora Bunko

隅田川は夕潮でいっぱいだった。石垣の八分めまでたぷたぷとあふれるような水からは、かなりつよく潮の香が匂ってきた、初秋の昏れがたの残照をうけて、川波は冷たくにぶ色にひかり、ひとところだけ明るく雲をうつしていた。竹屋の渡しあたりを川上へいそぐ小舟が見えるほかは、広い川面に珍しく荷足も動かず、鴎の飛ぶようすもなかった。……河岸ぞいに急いでゆくと、足音に驚いて小さな蟹が幾つも、すばやく石垣の間へ逃げこむのがみえる。ついするとそれを踏みつけそうで、おせんははらはらしながら歩いていった。神田川のおち口に近い柳の樹蔭の、もううす暗くなったところに庄吉は立っていた。柳の樹に肩をもたせて、腕組みをして、どこやら力のぬけたような姿勢で、ぼんやり川波を見まもっていた。

「有難うよく来て呉れた」

彼はおせんを見ると縋りつくような眼をした。

「あたし柳原まで買い物をしにゆくつもりで出て来たの、遅くなっては困るし、もし人に見られるときまりが悪いから……」

「話はすぐ済むよ」庄吉はおせんよりおどおどしていた。ふだんから色の白い顔が、血のけもないほど蒼くなり、大きく瞠いている眼は、不安そうに絶えずあたりを見まわすのだった、「……今朝とうとう幸太と喧嘩をしてしまった、おれはがまんして来た、きょうまでずいぶんできないがまんをして来たんだ、けれども