Classici giapponesi con furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Leggi 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 148.519 caratteri · 296 schermate
綱宗はせかせかと云った。いかにもうれしそうで、そのうれしさが抑えられないというようすだった。
甲斐は盃を受けた。綱宗は云った。
「重ねるがいい、おれも飲む、よく来てくれた、飲みながら話そう、久しぶりだった」
綱宗はひとりで話し、よく飲んだ。
甲斐は黙って聞き、云われるままに盃を重ねた。綱宗のうれしそうなようすを見ると、酒を辞退する気にもなれなかったし、話しの腰を折ることもできず、知らぬまに一刻あまりも経ってしまった。やがて、綱宗はしだいに昂奮し、まるく肉づきのいい顔がいつか白く硬ばってきた。
「おれは哀れな人間だ、どんなにおれが哀れな人間だか、甲斐は知っているだろう」と綱宗は云った、「父上はおれを憎んでいた」
「おそれながら」
甲斐はとめようとした。話しが先君(忠宗)に及ぶことだけは、避けなければならぬと思った。しかし、綱宗は頭を振って云った。
「いや、おれは云う、おれが云わなくとも、誰でも知っていることだ、父上はおれを憎んでいた、おれがこのはつを知るまで、父上はおれに妻えらびもしなかった、六十万石の世子でありながら、二十歳になるまで婚約者もないということがあるか、そんなことがほかにあると思うか、甲斐」