Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

Leggi 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 148.519 caratteri · 296 schermate

Aozora Bunko

「なんですか」

「少し口をお慎しみあそばせ」

「貴女にはその眼を慎しんでもらいたいですね、貴女のそのにらみかたは不謹慎だ、柴田老は気がつかなかったらしいが、さっきから私はひやひやしていたんですぜ」

「あら、なんでひやひやなすったんですか」

「そらその眼だ」と七十郎は云った、「その眼でね、貴女は休みなしに、誰かの顔を眺めていたんだ」

「まあ、伊東さまったら」

「恍惚と、溶けるような眼つきでね、そうでしょう原田さん」

鳥羽は平然と箸を取った。十左がさも不快そうに云った、「ばかなことを云う男だ」

七十郎は笑った、「里見老などにはばかなことだろうさ、しかし米谷の館主が気づいたら、面白かったんだがな」

「教えてやればよかった」と甲斐が云った、「そうすれば誰がきめつけられたか、わかっただろうにな」

「まあいいですよ」

七十郎はにやりとし、十左に向かって「盃を返してくれ」とうながした。そして、塩沢丹三郎に酌をさせながら、十左に云った。

「とにかく、これで原田さんも万全ではなくなったわけさ、なにしろ温和で謙遜で、情誼に篤くて、かつていちども人に憎まれたり貶られたりしたこともなし、そういう隙をみせたこともない人だったからな」