Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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しほんたいへいき

私本太平記

吉川 英治

Leggi 私本太平記 (しほんたいへいき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 116.638 caratteri · 233 schermate

Aozora Bunko

「やはりあいつがいないのは淋しいな。そうは思わぬか」

「あいつとは」

「道誉だ」

「道誉。なるほど」

「それに師直なども、無事でいれば、今日など賑やかに振舞うやつだ。思えば武庫川の日から今日はちょうど二十五日目だな」

挑むものへ挑みを以て返すように、直義の眸は光った。

ふれたくない。思い出したくもない。尊氏にはよく分っているはずだ。それを何でこんな席で言いだしたのか。

「ご催促とみえますな」

直義は、兄の底意に腹が立って、わざと自分から話を露骨にした。

「師直、師泰の死から早や二十日の余もたっている。だのになぜ、下手人の上杉能憲を依然そのままにしておくか。それがお気に食わんのでしょう」

「いや、そんなつもりでもないが、しかし処置は早いに越したことはなかろう。和解の実を衆に納得させる上にも」

「ですが、あの日、武庫川に待って、師直以下の眷属を襲殺したのは、能憲の下知ではなく、さきに師直のために越後で殺された上杉、畠山の遺臣どもが、主の恨みをふくんで勝手にやったことだとか。事実、能憲はなにも知っていないのだ。罰しようはありますまい」

「なくはない」

尊氏の眸は、そう言う直義の卑劣さをあきらかに突き刺していた。