Classici giapponesi con furigana
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しほんたいへいき
私本太平記
吉川 英治
Leggi 私本太平記 (しほんたいへいき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 116.638 caratteri · 233 schermate
彼の番
彼の番
しかし尊氏は変った。わけて直義の死から後において著しい。
何事によれ大ざっぱで、人まかせで、大局はよくつかんでいたが、つねに茫洋と見える彼だった。ぜひなく陣頭に立つときでも、不利と見れば見得なく逃げるし、すすんで乱軍の中を馳駆するような猛将ぶりは彼にはなかったことである。
その彼が、近来は往々、将士のさきに立って大童な働きを見せ、血に染んだ赤い陣刀を肩にかついで、体じゅうで息をはアはアいわせながら引き揚げて来るようなこともしばしばだった。
いや、こまかい政令や賞罰のことなどでも、病床の日でさえ、みずからびしびし裁決をくだし、その命じ方がまた、ただならず気短だった。かつてのような悠々たる風ではない。
師直も今はいないのだ。
直義も亡くなった。
左右の手を失ったにひとしい寂寥がひしとそこにはあるのであろう。師直に代る者、それはいない。直義に代る者、なおさらいない。人は多いが、残っているのはみな犬と猿だ。ひとり佐々木道誉の名はいつも彼のあたまにあるが、しょせん、腹から心のゆるされる男ではない。
しかも、義詮はまだ若年だ。
あれこれ周囲と将来を考えると、彼は、自分という者を置き換えずにはいられなくなってくる。