Classici giapponesi con furigana
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しほんたいへいき
私本太平記
吉川 英治
Leggi 私本太平記 (しほんたいへいき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 116.638 caratteri · 233 schermate
ポチとそこに何か腫ている。“蚊触”という病名があった。医師たちはこの発見をすぐそれに附してかぶれの練薬を塗布して容体の変化をみていた。ところが数日のまに、そこは朱い椀のフタぐらいな大きさにまで腫れ上がり、また幾つもの小さいくちを作って、さながら柘榴みたいな皮色さえ呈して来た。
「これは?」
と、典医たちも狼狽して、ようやく自分たちの手におえない重患とさとり、協議のすえ、当時、町医ではあるが外科の第一と評判のある医僧有隣という者をよんで篤と診させた。有隣は濁さないことばで告げた。
「癰瘡と拝診つかまつりました。おそれながら癰は古来から命とりと申すほど難治の病。ひたすら、看護と療法の最善をつくすしかございません」
以来、看護は登子が、療治には侍医たちが、有隣のもとに全力をつくしてきた。わけて登子は帯も解かない窶れを病人と共にして、良人の苦熱を自分のなかにも喘いでいた。
しかし経過は何の見るべきものもない。患部は朝ごとに目もあてられぬ斑点を増して、腫れた所は赤ぐろく耀き、無数といっていい孔からは血膿を出した。それは煮え沸る火山の噴火口が幾つもの吐けぐちから硫黄を噴いているのに似ていた。