Classici giapponesi con furigana
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たでくうむし
蓼喰う虫
谷崎 潤一郎
Leggi 蓼喰う虫 (たでくうむし) di 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 110.066 caratteri · 216 schermate
老人が今日はしきりに泊めることを主張したのは、恐らくそれが予定の計画だったのであろうが、その折角の心づかいを要は多少迷惑には感ずるものの、殊更それを避けようとするほど気が重くなりもしない代りには、今更何の足しになろうとも思えなかった。
「えらく蒸しますね。風がぱったりなくなってしまった。………」
要は消えかかった蚊やりの煙の真っすぐに立ちのぼる土庇の外を仰いだ。止んだのは庭の面の風ばかりではない、お久もあおぐのを忘れたように、手にある団扇をじっと動かさずにいるのである。
「うっとしおすなあ、雨どすやろか?」
「そうかも知れない、………さっと一と降り来るといいんだが、………」
そよともしない青葉の上には、雲ぎれのしたところどころに星のにじんでいるのが見える。虫が知らせるとでも云うのか、ちょうど今頃、父親の説諭に反抗している妻の一途な言葉のはしはしが聞えて来るような心地がする。要はその時、妻より一層強気な決意がいつしか自分の胸の奥にも宿っていることをはっきり感じた。
「何時でしょう」
「八時半頃どす」
「まだそんなもんですか。静かですねえ、この近辺は」
「早おすけど、横におなりやしたらどうどす? そのうちにお帰りやすやろさかい、………」