Classici giapponesi con furigana
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たでくうむし
蓼喰う虫
谷崎 潤一郎
Leggi 蓼喰う虫 (たでくうむし) di 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 110.066 caratteri · 216 schermate
その十三
今の自分は誰に遠慮をする必要もないのであるが、彼にはへんに道徳的な、律義なところがあるせいであろうか、青年時代から持ち越しの、「たった一人の女を守って行きたい」と云う夢が、放蕩と云えば云えなくもない目下の生活をしていながら、いまだに覚め切れないのである。妻をうとみつつ妻ならぬ者に慰めを求めて行ける人間はいい、もしも要にその真似が出来たら美佐子との間にも今のような破綻を起さず、どうにか弥縫して行けたであろう。彼は自分のそう云う性質に誇りも引け目も感じてはいないが、正直なところそれは義理堅いと云うよりも寧ろ極端な我がままと潔癖なのだと、自分では解釈していた。国を異にし、種族を異にし、長い人生の行路の途中でたまたま行き遇ったに過ぎないルイズのような女にさえも肌を許すのに、その惑溺の半分をすら、感ずることの出来ない人を生涯の伴侶にしていると云うのは、どう思っても堪えられない矛盾ではないか。
その十三
拝復
先日は失礼致候。あれより予定の通り阿波の鳴門徳島を経て去月二十五日帰洛、二十九日御差立の貴札昨夜披見致候。誠に誠に思いの外の儀、美佐こと素より不束ながら日頃左様なる不所存者のようには養育不致候処、俗に魔がさしたと申すにや、拙老此の歳に及び斯かる憂きことを耳にいたし候は何の因果かと悲歎やる方なく候。