Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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こうじん

行人

夏目 漱石

Leggi 行人 (こうじん) di Natsume Sōseki (夏目 漱石) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 224.801 caratteri · 452 schermate

Aozora Bunko

自分は母のいう通り元の席に着いたが、気の毒でちょっと顔を上げ得なかった。そうしてこの無恰好な態度で、さも子供らしく母から要るだけの金子を受取った。母が一段声を落して、いつものように、「兄さんにはないしょだよ」と云った時、自分は不意に名状しがたい不愉快に襲われた。

八

自分達はその翌日の朝和歌山へ向けて立つはずになっていた。どうせいったんはここへ引返して来なければならないのだから、岡田の金もその時で好いとは思ったが、性急の自分には紙入をそのまま懐中しているからがすでに厭だった。岡田はその晩も例の通り宿屋へ話に来るだろうと想像された。だからその折にそっと返しておこうと自分は腹の中できめた。

兄が湯から上って来た。帯も締めずに、浴衣を羽織るようにひっかけたままずっと欄干の所まで行ってそこへ濡手拭を懸けた。

「お待遠」

「お母さん、どうです」と自分は母を促がした。

「まあお這入りよ、お前から」と云った母は、兄の首や胸の所を眺めて、「大変好い血色におなりだね。それに少し肉が付いたようじゃないか」と賞めていた。兄は性来の痩っぽちであった。宅ではそれをみんな神経のせいにして、もう少し肥らなくっちゃ駄目だと云い合っていた。