Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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きんろう

金狼

久生 十蘭

Leggi 金狼 (きんろう) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 89.438 caratteri · 179 schermate

Aozora Bunko

……卑怯だわ。あなたがそういうなら……」

〈あたしにも言いたいことがある。あたしこそ、あなたが犯人じゃないかと思っている。でもいちどだってそれを口にだしたことがあるか。それなのに、あなたは……〉

耐えがたい孤独感が葵のこころをつよく絞めつけた。卓にうち伏すと、声をあげて泣いた。久我が立ってきて葵の肩へ手を置いた。

「……葵君、君は疲れているんだよ。それで、なんでもないことが癇にさわるんだ。すこし休養しなくては駄目だね。……そういう僕も、つくづくこの稼業がいやになった。このごろはやめることばかり考えている。……(それから葵の顔を覗きこむようにして)どうだ、葵君、二人で山奥へ行く気はないか。……僕の友人が上高地のずっと上で、たくさん牛を飼っている。やってこい、やってこいと、この間からしきりに言ってよこすんだ。山にこそ直接な自然がある。牛や巒気と交わりながら、しばらく悠々とやってみようじゃないか。いまの君にはなによりそういう生活が必要なんだ」

優しそうないい廻しのなかに感じられる冷酷さは、なにか、ぎゅっと胸にこたえた。涙にぬれた顔をあげると思いきって久我の手を払いのけた。