Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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きんろう

金狼

久生 十蘭

Leggi 金狼 (きんろう) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 89.438 caratteri · 179 schermate

Aozora Bunko

戸口に西貝の姿があらわれた。

呆っ気にとられて、突っ立ったまま、ぼんやりとこの光景を眺めていた。

最後にひとつ、猛烈なやつを横っ面へくれておいて立ちあがると、古田は西貝を手荒くおしのけ肩をふりながら出ていった。

長く伸びている乾のそばへよると、西貝はその顔のうえへしゃがみながら、

「おい、どうした」

と、ふざけた調子でいった。

上唇から顎へかけて、夥しい鼻血が流れ、暗がりで見ると、急に髯がはえたようにみえるのだった。むくんだように顔は腫れあがり、熱をもってテラテラと光っていた。

西貝の声をききつけると、乾は腫れあがった瞼をおしつけながら、

「やられましたよ。(と、案外に元気な声でいいながら、そばにころがっている金盥を指さし)すまないが、階下へ行ってそれに水を汲んできてくださいな。……それから、台所に手拭いがあるから……」

西貝が水を汲んで二階へあがってみると、乾は寝台に腰をかけ、新聞紙をひき裂いては、しきりに鼻孔につめをかっていた。

「おい、乾老。……いったい、どうしたってんだ」

乾は手拭いをしぼって鼻梁にあてながら、

「……あたしが密告したのをききこんでやってきたんです。