Classici giapponesi con furigana
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あるはいまつのどくはく
ある偃松の独白
中村 清太郎
Leggi ある偃松の独白 (あるはいまつのどくはく) di 中村 清太郎 (なかむらせいたろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 132.905 caratteri · 262 schermate
谷間の淡靄は、その光りに飽和して、大柄の段だら縞に、山谷を染め分ける。真向うの空清水の直線的な深い山峡には、残雪が今しもめざめて、蒼白い上わ眼を見はる。光に遠い黒部の谷水は、時折り緑樹の間に、冷え冷えしい氷雪の塊りかと見えたり、あるいは井戸側をめぐるにも似た岨路の足もと遙か、冴えた幻燈の色絵のようにのぞかれたりする。道ばたに多いくろもじを手折って、わざとかみながら行けば、あまりの強い刺戟に酔い心地になる。
西方、毛勝岳から派出された、巨大な楯の観あるチュジャク山――頂線は針葉樹の鋭い鋸歯だ――それと劔岳の側待山たる仙人山の、見上げるような高尾根、この両山の間から、小黒部谷が奔下してくる。ここで黒部の本流は、横さまに堰かれた形に押しせばめられて、「猿飛び」の峡澗を成している。それは両岸の花崗岩壁が、近い所では僅々三、四間まで額を突き合せて、谷水はその巨大な暗渠の中を、流れるごとくまた流れぬごとく、音も無く過ぎて行くのだ。それを木の間に俯し望んで、ぞくッと襟をかきあわせる。そしてこの上流が、またすこぶるいい。水は勢いをほしいままにし、岩も死力を尽している。