Classici giapponesi con furigana
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いきりょう
久生十蘭ジュラネスク 珠玉傑作集
久生 十蘭
Leggi 久生十蘭ジュラネスク 珠玉傑作集 (いきりょう) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 20.698 caratteri · 42 schermate
五
「ほんとうにやってくださいますか」
「でも、長くは続きそうもありませんから、その辺のところは」
「ええ、心得ていますわ。あたし、傍にいてうまくやりますから」
五
三十郎がお迎火の煙を押跨ぐようにして土間へ入って行くと、竈の前に踞んでいた皺くちゃのお婆さんが火吹竹を持ったままヨチヨチとよちり出て来た。穴のあかんばかりに三十郎の顔を眺めてからだだっ広い框座敷の奥のほうへ向って、
「お爺、お爺、早よ出てござんせ……弥之助のお精霊が蝙蝠傘をついて戻り来した」
と、叫びたてた。
大きな囲炉裏の自在鉤の向うから、ひと摘みほどのちょん髷をのっけた白髪のおじいさんが上端までころげ出して来て、
「おお、弥之じゃ、弥之じゃ。……されば、逐々戻り来しか。来る年も来る年も待ち侘ったが、冥土の便宜が覚束ないか、いっこう、すがたをお見されぬ。今もいま、婆刀自と愚痴いうていた。……ああ、ようまあ戻り来しぞ。眉面つきはありし日にそのまま……尻からげなどして空嘯いていずと、早よ炉端へ上りな。……はあれ喜がしや、うれしやな」
涙も水洟もいっしょくたにこすりたてながら、三十郎の手を取ろうとして慌てて乗り出したはずみに土間へころんと転げ落ち、そこへ坐っておばあさんと手を取り合ってしどろもどろに泣きだした。