Classici giapponesi con furigana
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いきりょう
久生十蘭ジュラネスク 珠玉傑作集
久生 十蘭
Leggi 久生十蘭ジュラネスク 珠玉傑作集 (いきりょう) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 20.698 caratteri · 42 schermate
葡萄蔓の束
北海道の春は、雪も消えないうちにセカセカとやって来る。なにもかもひと口に頬張ってしまおうとする子供のようだ。落葉松の林の中は固い雪でとじられているのに、その梢で鶫が鳴く。
低く垂れていた鈍重な雪雲の幕が一気にひきあけられ、そのうしろからいちめん浅みどりの空が顔をだす。
雪の表面が溶け、小さな流れをつくって大急ぎで沢のなかへ流れこみ、山襞や岩の腹についていた雪は大きな塊になってあわてふためいて谷の底へころがりおちる。
藪蔭には蝦夷菫。
雪溶けの沢水の中には、のそのそと歩きまわる蛄。
丘はまだ斑雪で蔽われているのに、それを押しのけるようにして土筆が頭をだす。去年の楢の枯葉を手もて払えば、その下には、もう野蒜の緑の芽。
風はまだ身を切るように冷たいのに、早春の高い空で雲雀が気ぜわしく鳴く。なにもかもいっぺんにやってくる春だ。
波が高まるようになだらかに盛りあがっている黄色い枯芝の丘の上に、ビザンチン風の、赤煉瓦の修道院の建物が建っている。
長い窓の列を見せた僧院と鐘楼のついた聖堂。質素なようすをした院長館。白楊の防風林をひかえた丘の蔭には牛乳を搾ったり牛酪や乾酪をこしらえる「仕事場」