Classici giapponesi con furigana
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ごべんのつばき
五瓣の椿
山本 周五郎
Leggi 五瓣の椿 (ごべんのつばき) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 149.721 caratteri · 296 schermate
七
「私がこんな気持になったのは初めてだ」と彼は云った、「生れてこのかた初めて、恋が辛い苦しいものだということを知った」
おりうはなにも云わず、身動きもしなかった。
「聞いておくれ、おりうさん」と彼は思い詰めた調子で云った、「私はお由と別れた、おまえの望みどおりお由と別れたよ、おりうさんの望みどおりだ、あのときの約束は覚えておいでだろうね」
おりうは顔をそむけたまま、「本石町のむさし屋という薬問屋を知っているか」と訊いた。蝶太夫はけげんそうな眼をした。
「さあ、――聞いたようにも思うが」
「おそのっていうおかみさんがいたって」と云って、静かにおりうは振り向いた、「――お師匠さん、知ってらっしゃるんでしょう」
蝶太夫はあいまいに頷いた、「そう云えば、ひところごひいきになったことがあるようだけれど」
「うそ仰しゃい」とおりうが云った、「あたしすっかり聞きましたよ」
七
「聞いたって、なにを」
「その人をうまくたらして、三年の余も逢い続けていたって」おりうは溶けるような眼で彼を見た、「その人には病身の良人があったけれど、お師匠さんにのぼせあがって、良人の面倒もみず、夢中になって逢曳きを続けていたんですって」