Classici giapponesi con furigana
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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
Leggi 南国太平記 (なんごくたいへいき) di 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 493.291 caratteri · 991 schermate
八郎太は、手箱から出てくる文書の始末をつづけながら、黙っていた。
「何んなことでも致します。何んな、辛い辛抱でも致します」
八郎太は、手をついている深雪の眼の涙を、いじらしそうに見た。深雪は、湧いてくる涙を、睫毛で押えつつ
「お父様、決して、御手纏いにはなりませぬから――」
「お前は、江戸へ残って――」
「ええ? 江戸へ残って――お父様、残って? 一人で残るのでございましょうか」
「話をよく聞かずに、何んじゃ。そんなことで手助けができるか」
「いいえ、お父様、妾一人残りましても、御申し付けのことは仕遂げます」
八郎太は、うつむいている綱手に
「綱手、お前は、母について国許へ参るがよい」
「はい」
「生れて三歳までしか居らなんだから、国と申しても、何んの憶えもあるまいが――よいところじゃ。お前の生れた家も、母の家も、親類達も、皆そこにある」
「幾日ぐらいかかりましょうか」
「道程は、ざっと三百八十里、女の足で二月はかかろうか」
「まあ、三百八十里?」
綱手も、深雪も、安達ヶ原の鬼の話や、胡麻の蠅のことや、悪い雲助のことや、果のない野原、知らぬ道の夜、険しい山などを、いろいろと、心細く、悲しく、想像した。