Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

Leggi 南国太平記 (なんごくたいへいき) di 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 493.291 caratteri · 991 schermate

Aozora Bunko

「斬りたいのう」

伊牟田は、こう云って、刀の鯉口を、一寸くつろげてみた。

「天下御免で人が斬れるなど、いい御時世だの」

二人は、いつの間にか、近づいて来た叡山を、唐崎を見ながら、追手が来ないと知って、あぐらをかいて、坐ってしまった。帆は、十分に風をはらんでいた。

「ほほう、これは、尤物だ」

有村が、入ると、深雪を見て、益満へ、こういった。深雪は、ちらっと、赤くなったが、心の中で

(何んという失礼な――)

と、憤った。益満とは、小さい時からの馴染で、兄のように仕えているから、益満の、ふしだらな言行に、何んの反感も、憎悪も起きなかったが、他人から、こんなことをいわれるのは――町人の、巾着切の庄吉でさえ、ちゃんと、礼を心得ているのに、武士が――人の上に立つ武士が――

(何んという無礼な)

と、感じると、深雪は、顔も、膝も、横に向けてしまった。

薄暗い造りの京の宿――手摺も、階段も、廊下も、黒光に光っていたし、つつましい床の間、渋い襖――それは、粗末な、街道筋の宿とは、全くちがって、品のいいものであったが、深雪の心は、だんだん、おちつきが無くなって来ていた。

何んとなく頭のうしろに、鉛が沈んでいるように重かったし、眼を閉じても、光る水玉のようなものが、きらきらと――時々は、眼を開いていても、ちらちらと見えた。