Classici giapponesi con furigana
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あづまばし
問はずがたり・吾妻橋 他十六篇
永井 荷風
Leggi 問はずがたり・吾妻橋 他十六篇 (あづまばし) di 永井 荷風 (ながいかふう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 75.586 caratteri · 159 schermate
に来た客なので、調子もおのずから心やすく、
「アラ、木嶋さんじゃない。わたしよ。もう忘れちゃった。」
男は不意をくらって驚いたように女の顔を見たまま何とも言わない。
「パレスの十三号よ。道子よ。」
「知っているよ。」
「遊んでッてよ。」と周囲の人込を憚り、道子は男の腕をシャツの袖と一しょに引張り、欄干から車道の稍薄暗い方へと歩みながら、すっかり甘えた調子になり、
「ねえ、木嶋さん。遊んでよ。久しぶりじゃないの。」
「駄目だよ。今夜は。持っていないから。」
「あっちと同じでいいのよ。お願いするわ。宿賃だけ余計になるけど。」と言いながら、道子は一歩一歩男を橋向の暗い方へと引ッ張って行こうとする。
「どこへ行くんだ。宿屋があるのか。」
「向の河岸に静ないい家があるわ。わたし達なら一時間二百円でいいのよ。」
「そうか。お前が彼処に居なくなったのは、誰か好きな人ができて、一緒になったからだと思っていたんだ。こんな処へ稼ぎに出ているとは知らなかったヨ。」
「わたし、パレスの方は借金は返してしまうし、御礼奉公もちゃんと半年いてやったんだから、母さんが生きてれば家へ帰って堅気で暮すんだけれど、わたし、あんたも知ってる通り、父さんも母さんも皆死んでしまって、今じゃほんとの一人ぼっちだからさ。