Classici giapponesi con furigana
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いえ
家
島崎 藤村
Leggi 家 (いえ) di 島崎 藤村 (しまざきとうそん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 141.411 caratteri · 285 schermate
古めかしい奥座敷に取付けられた白い電燈の蓋の下で、三吉は眼が覚めた。そこは達雄の居間に成っていたところで、大きな床、黒光りのする床柱なぞが変らずにある。庭に向いた明るい障子のところには、達雄の用いた机が、位置まで、旧の形を崩さないようにして置いてある。黄色い模様の附いた毛氈の机掛は、色の古くなったままで、未だ同じように掛っている。
年をとったお種は、旅に来て寝られない弟よりも、早く起きた。三吉が庭に出て見る頃は、お種は箒を手にして、苔蒸した石の間をセッセと掃いていた。
「こんな山の中にも電燈が点くように成りましたかネ」と三吉が言った。
「それどこじゃ無いぞや。まあ、俺と一緒に来て見よや」
こうお種は寂しそうに笑って、庭伝いに横手の勝手口の方へ弟を連れて行った。以前土蔵の方へ通った石段を上ると、三吉は窪く掘下げられた崖を眼下にして立った。
削り取った傾斜、生々した赤土、新設の線路、庭の中央を横断した鉄道の工事なぞが、三吉の眼にあった。以前姉に連れられて見て廻った味噌倉も、土蔵の白壁も、達雄の日記を読んだ二階の窓も、無かった。梨畑、葡萄棚、お春がよく水汲に来た大きな石の井戸、そんな物は皆などうか成って了った。