Classici giapponesi con furigana
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こざくらひめものがたり
小桜姫物語
浅野 和三郎
Leggi 小桜姫物語 (こざくらひめものがたり) di 浅野 和三郎 (あさのわさぶろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 136.097 caratteri · 267 schermate
『きっとあれが私の住居に相違ない……。』
私は急いで巌から降りてそこへ行って見ると、案に違わず巌山の底に八畳敷ほどの洞窟が天然自然に出来て居り、そして其所には御神体をはじめ、私が日頃愛用の小机までがすでにキチンと取り揃えられてありました。
一と目見て私は今度の住居が、心から好きになって了いました。洞窟と言っても、それはよくよく浅いもので明るさは殆んど戸外と変りなく、そして其所から海までの距離がたった五六間、あたりにはきれいな砂が敷きつめられていて、所々に美しい色彩の貝殻や香いの強い海藻やらが散ばっているのです。
『まるきり三浦の海岸そっくり……こんな場所なら、私はいつまでここに住んでもよい……。』
私は室を出たり、入ったり、しばらく坐ることも打忘れて小娘のようにはしゃいだことでした。
今日から振り返って考えると、この海の修行場は私の為めに神界で特に設けて下すったお浚いの場所ともいうべきものなのでございました。境遇は人の心を映すとやら、自分が現世時代に親んだのとそっくりの景色の中に犇と抱かれて、別に為すこともなくたった一人で暮らして居りますと、考はいつとはなしに遠い遠い昔に馳せ、ありとあらゆる、どんな細かい事柄までもはっきりと心の底に甦って来るのでした。