Classici giapponesi con furigana
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やまをおもう
山を思う
石川 欣一
Leggi 山を思う (やまをおもう) di 石川 欣一 (いしかわきんいち) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 79.814 caratteri · 157 schermate
いつの間にか私は山岳家にされてしまった。尤も聰明なる社会は、私が前人未踏の、いわゆる処女峰の征服もしていなければ、冬の山で遭難もしてもいないので先ず三流どころの山岳家と認めているらしい。三流どころの山岳家を最もよろこばせるのは、「今年はどちらへ」と質問することである。山岳家は、それが晩※の席上であるならば、テーブル・クロスにフォークの柄で谷を書き、塩をひっくり返して山をつくり、「北穂」の第三ピークと第四ピークとの関係を説明するであろうし、それがカフェーであるならば、コックテールをつくる氷の一片を貰い受け、女給のヘヤ・ピンでそれに穴をあけては、この夏行かんとする劔岳の平蔵谷の上方の、ステップの切りようを語って、女給の胆と自分の財布とを寒くすることであろう。
◇
もちろん私はテーブルマウンテニヤでもなければ、カフェーアルピニストでもない。だが三流の登山家であることは、聰明な世間も、愚昧な私自身も知っている。そこで世間は私に「今年はどちらへ?」といゝ、私は非常な犯罪、例えば殺人を、打ちあけでもするかのように、声を低くし、世間の耳に口を近づけて――「誠に相済みませんが、今年は会社が忙しく、その上赤ん坊がまた一人殖えたので、山へ行く費用が出来ません。