Classici giapponesi con furigana
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あるたんぼうきしゃのはなし
平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕
平林 初之輔
Leggi 平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕 (あるたんぼうきしゃのはなし) di 平林 初之輔 (ひらばやしはつのすけ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 113.247 caratteri · 229 schermate
六
あ、有り難い、お嬢さまだ。ゆ――ゆるして下さい」
こう言いながら件の男はよろけるように部屋の中へはいってきて、深尾みな子と称する女の脚下にばったりつくばった。
六
「貴方はどなたですか?」と深尾みな子と呼ばれた女は、女王のような気品を維持しながらきっとなって、しかし少なからず驚いて言った。
「わたしは、このホテルのコックをしておるものです。ほんの十分間だけきいて下さい。何もかも申し上げます、すっかり貴女は――やっぱりお嬢さんだ。やっぱり生きていらっしゃったか。お嬢さまには、私の顔には見おぼえがありますまい。私は、大正六年の夏、お嬢さまの店に使われていたものですが、ちょっとした口いさかいから、あやまって仲間の男を殺して、地震の時まで、あそこに見える根岸の刑務所にはいっていたのでございます。地震の時に、多分そのことは新聞でご承知でありましょうが、あの刑務所では、危急の場合の非常手段で、いったん囚徒を解放したのでございます。私も解放された一人でございました。私は、何はおいても、たった一人の娘の安否が気懸かりだったので、二日ばかり根岸の山の上に避難していましたが、火がしずまるのをまってその時分、伊勢佐木町の料理屋に奉公していた娘のところへまっすぐにたずねて行きました。