Classici giapponesi con furigana
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あるたんぼうきしゃのはなし
平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕
平林 初之輔
Leggi 平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕 (あるたんぼうきしゃのはなし) di 平林 初之輔 (ひらばやしはつのすけ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 113.247 caratteri · 229 schermate
五
妾は相手が何を言っているのかよく耳にもはいらないで、一分間もたってから、やっと耳の中にのこっている相手の言葉を思い出したくらいです。と言って妾はあの人のことを考えていたわけでもありません。なんにも考えないで、放心したようになっていたのです。
その夜おそく帰りがけに、何ということでしょう! 妾は昨日まで、うるさくてたまらなかった人と無我夢中で熱烈な恋を語りあったのです。まるでカルメンそのもののように気まぐれに。
家へ帰ると妾は急いでレター・ペーパーを拡げてペンを走らせました。
――妾は新しい恋を得ました。今妾は非常に幸福です。貴方はやっぱり、貴方が当然帰らねばならぬ人のところへお帰りなさいませ。これっきり妾たちは何事もなかったように忘れましょう。白紙になりましょう。左様なら。
柳子
千一郎様
妾は読み返しもせずに、ぐずぐずしていると考えが変わったり、決心がにぶったりしてはいけないと思ったものですから、もう十二時過ぎていましたけれど二丁も先にあるポストまでこれをもって行って投函しました。
五
あの人を思ってはならないという理性の命令と、どうしてもあの人を思わないではいられないという情熱の要求とが、どうしても互いに譲らないで、心の中で血みどろの争闘をはじめたとき、妾の心はとてもこの重傷にひとりでたえてゆくことは