Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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あるおんな

或る女

有島 武郎

Leggi 或る女 (あるおんな) di 有島 武郎 (ありしまたけお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 149.981 caratteri · 295 schermate

Aozora Bunko

「さあ診察料や滋養品で百円近くにもなっていますかしらん」

「あなたは金は全く無しですね」

木村はさらに繰り返していってため息をついた。

葉子は物慣れぬ弟を教えいたわるように、

「それに万一わたしの病気がよくならないで、ひとまず日本へでも帰るようになれば、なおなお帰りの船の中では世話にならなければならないでしょう。……でも大丈夫そんな事はないとは思いますけれども、さきざきまでの考えをつけておくのが旅にあればいちばん大事ですもの」

木村はなおも握った手を鼻の下に置いたなり、なんにもいわず、身動きもせず考え込んでいた。

葉子は術なさそうに木村のその顔をおもしろく思いながらまじまじと見やっていた。

木村はふと顔を上げてしげしげと葉子を見た。何かそこに字でも書いてありはしないかとそれを読むように。そして黙ったまま深々と嘆息した。

「葉子さん。わたしは何から何まであなたを信じているのがいい事なのでしょうか。あなたの身のためばかり思ってもいうほうがいいかとも思うんですが……」

「ではおっしゃってくださいましななんでも」

葉子の口は少し親しみをこめて冗談らしく答えていたが、その目からは木村を黙らせるだけの光が射られていた。