Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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あるおんな

或る女

有島 武郎

Leggi 或る女 (あるおんな) di 有島 武郎 (ありしまたけお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 149.981 caratteri · 295 schermate

Aozora Bunko

定子に会ったところがどうなるものか。自分の事すら次の瞬間には取りとめもないものを、他人の事――それはよし自分の血を分けた大切な独子であろうとも――などを考えるだけがばかな事だと思った。そしてもう一度そこの店から巻紙を買って、硯箱を借りて、男恥ずかしい筆跡で、出発前にもう一度乳母を訪れるつもりだったが、それができなくなったから、この後とも定子をよろしく頼む。当座の費用として金を少し送っておくという意味を簡単にしたためて、永田から送ってよこした為替の金を封入して、その店を出た。そしていきなりそこに待ち合わしていた人力車の上の膝掛けをはぐって、蹴込みに打ち付けてある鑑札にしっかり目を通しておいて、

「わたしはこれから歩いて行くから、この手紙をここへ届けておくれ、返事はいらないのだから……お金ですよ、少しどっさりあるから大事にしてね」

と車夫にいいつけた。車夫はろくに見知りもないものに大金を渡して平気でいる女の顔を今さらのようにきょときょとと見やりながら空俥を引いて立ち去った。大八車が続けさまに田舎に向いて帰って行く小石川の夕暮れの中を、葉子は傘を杖にしながら思いにふけって歩いて行った。