Classici giapponesi con furigana
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にっき
日記
宮本 百合子
Leggi 日記 (にっき) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 65.193 caratteri · 131 schermate
六月五日
◎
昨夜、犬が自動車に轢かれ、妙に前にのめり乍ら、鳴き乍ら、人道の方に逃げて来るのを、半町ほどの距離で見、眼がまわるほど哀れに感じた。Aが見、前脚がすっかり折れてしまって居たと云う。あわれ、あわれ、死ぬまでああやって鳴き苦しむのかと思ったら、ブダが人間の笞に打れて、その救いの道を見出そうとした動機の万分の一が直感された。私に、あの憐れさで一生自動車にのらない発心が出来ようか。
六月五日(火曜)晴
軽らかな冷風が流れ、快よい朝。きのうの晩九時頃、才の編物教師のところで会ったと云う陸軍大学生の妻、明日離婚し、九州大分の国にかえる、再び上京して昼働き乍ら夜勉強するとき口を心配して呉れと、初めて来る。眉の濃い、九州地方特有の顔つきをした女の人が、ひどい悲しみをぐっと堪え、蒼ざめ、而も容儀を崩さないで居るのを見たとき、自分の心も千仞の谷底にとび降りたような心持になった。良人が陸軍の大尉になろうとして居、名誉職としてほこり、妻の国元から金を送らせ、それを滞らせたから、とか何か、感情上の行違いが基で、破綻になったらしい。見ず知らずの者のところへ行末の相談に来る心を考えると、あわれなり、何だか、ひどく不幸で自殺でもしてしまいはしないかと思われる相貌であった。