Classici giapponesi con furigana
ja-reading.com
Leggi i classici giapponesi online con furigana. Filtra per livello JLPT, tocca una parola per il significato e traduci una frase.
はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(一)
岡本 綺堂
Leggi 時代推理小説 半七捕物帳(一) (はんしちとりものちょう) di 岡本 綺堂 (おかもときどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 158.540 caratteri · 319 schermate
女たちは更に香炉を持って来て机のそばへ置くと、うす紫の煙がゆらゆらと軽く流れて、身にしみるような匂いにお蝶はいよいよ酔わされた。秋草を画いた絹行燈がおぼろにとぼされて、その夢のような灯の下に彼女も夢のような心持でかしこまっていた。
女たちは一冊の本を机の上にひろげて、お蝶にすこし俯向いて読んでいろと云った。魂はもう半分ぬけているようなお蝶は、なにを云われても逆らう気力はなかった。かれは人形芝居の人形のように、他人の意志のままに動いているよりほかはなかった。彼女はおとなしく本に向っていると、さぞ暑かろうと云って、一人の女が絹団扇で傍から柔かにあおいでくれた。
「口を利いてはなりませんぞ」と、このあいだの女がそっと注意した。お蝶はただ窮屈そうに坐っていた。
やがて縁伝いに軽い足音が静かにきこえて、三、四人の人がここへ忍んで来るらしかったが、顔をあげてはならないと、この間の女がまた注意した。そのうちに縁側の障子が音も無しに少しあいたらしく思われた。
「見てはなりませぬぞ」と、女はおどすように小声でまた云った。
どんな恐ろしいものが窺っているのかと、お蝶はいよいよ身をすくめて、ただ一心に机を見つめていると、障子は再び音も無しにしまって、縁側の足音はしだいに遠くなってゆくらしかった。