Classici giapponesi con furigana
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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(一)
岡本 綺堂
Leggi 時代推理小説 半七捕物帳(一) (はんしちとりものちょう) di 岡本 綺堂 (おかもときどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 158.540 caratteri · 319 schermate
四
くずれた壁の下にこおろぎが鳴いて、火の気のない空家は薄ら寒かった。
ここの家の前を通る傘の音がきこえて、大工の女房は外から帰って来たらしかった。
四
それから又半も経ったと思う頃に、濡れた草鞋の音がこの前を通って、隣りの家の門口に止まった。猫婆の息子が帰って来たなと思っていると、果たして籠や盤台を卸すような音がきこえた。
「七ちゃん、帰ったの」
お初が隣りからそっと出て来たらしかった。そうして、土間に立って何か息もつかずに囁いているらしかった。それに答える七之助の声も低いので、どっちの話も半七の耳には聴き取れなかったが、それでも壁越しに耳を引き立てていると、七之助は泣いているらしく、時々は洟をすするような声が洩れた。
「そんな気の弱いことを云わないでさ。早く三ちゃんのところへ行って相談しておいでよ。いいえ、もう一と通りのことはわたしが話してあるんだから」と、お初は小声に力を籠めて、なにか切りに七之助に勧めているらしかった。
「さあ、早く行っておいでよ。じれったい人だねえ」と、お初は渋っている七之助の手を取って、曳き出すようにして表へ追いやった。
七之助は黙って出て行ったらしく、重そうな草鞋の音が路地の外へだんだんに遠くなった。