Classici giapponesi con furigana
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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(六)
岡本 綺堂
Leggi 時代推理小説 半七捕物帳(六) (はんしちとりものちょう) di 岡本 綺堂 (おかもときどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 196.831 caratteri · 396 schermate
はっと思って再び見定めようとすると、その白い影はもう消え失せていた。
「心の迷いか」と、長三郎は独りで笑った。
蝶の影は彼の迷いであったかも知れないが、さらに一つの黒い影が彼の眼のさきにあらわれた。水明かりに透かして視ると、それは確かに人の影で、音羽の方角からふらふらと迷って来るのであった。
長三郎は油断なく提灯をさし付けて窺うと、それは火の番の娘お冬で、さも疲れたように草履をひき摺りながら歩いて来た。
「お冬か」
長三郎は思わず声をかけると、お冬はこちらを屹と見たが、忽ちに身をひるがえして元来た方へ逃げ去ろうとした。その挙動が怪しいので、長三郎は直ぐに追いかけた。追い捕えてどうするという考えもなかったが、自分を見て慌てて逃げようとする彼女の挙動が、いかにも胡乱に思われたからであった。
疲れているらしいお冬は遠く逃げ去るひまも無しに、追って来る長三郎に帯ぎわをつかんで引き戻された。そのはずみに、彼女はよろめいて倒れた。
「なぜ逃げる。わたしを見て、なぜ逃げるのだ」と、長三郎は声を鋭くして訊いた。
お冬は黙っていた。
「お前はこれから何処へ行くのだ」
長三郎はかさねて詰問しながら提灯の火に照らして見ると、お冬は右の足に草履を穿いて、左足は素足であった。