Classici giapponesi con furigana
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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(六)
岡本 綺堂
Leggi 時代推理小説 半七捕物帳(六) (はんしちとりものちょう) di 岡本 綺堂 (おかもときどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 196.831 caratteri · 396 schermate
半七捕物帳
一
一
四月なかばの土曜日の宵である。
「どうです。あしたのお天気は……」と、半七老人は訊いた。
「ちっと曇っているようです」と、わたしは答えた。
「花どきはどうも困ります」と、老人は眉をよせた。「それでもあなた方はお花見にお出かけでしょう」
「降りさえしなければ出かけようかと思っています」
「どちらへ……」
「小金井です」
「はあ、小金井……。汽車はずいぶん込むそうですね」
「殊にあしたは日曜ですから、思いやられます」
「それでも当節は汽車の便利があるから、楽に日帰りが出来ます。むかしは新宿から淀橋、中野、高円寺、馬橋、荻窪、遅野井、ぼくや横町、石橋、吉祥寺、関前……これが江戸から小金井へゆく近道ということになっていましたが、歩いてみるとなかなか遠い。ここで一日ゆっくりお花見をすると、どうしても一泊しなければならない。小金井橋のあたりに二、三軒の料理屋があって、それが旅籠を兼業ですから、大抵はそこに泊めてもらうことになるのですが、料理屋といっても田舎茶屋で、江戸から行った者にはずいぶん難儀でした」
「あなたもお出でになった事があるんですね」
「ありますよ」と、老人は笑った。