Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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やなぎばしものがたり

柳橋物語

山本 周五郎

Leggi 柳橋物語 (やなぎばしものがたり) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 104.300 caratteri · 202 schermate

Aozora Bunko

しかし生きているだけが精いっぱいのくらしである、辛うじて死なずにやっている身のうえでは、紅白粉どころか、丈夫でいることを、せめてもの自慢にするほかはなかった。――うしろに足音がした。おせんは全身のおののきにおそわれ、こらえ性もなく振返った。そこには庄吉がいた。まぎれもない庄吉が縞の布子に三尺を締めて、腕組みをして、灰色の沈んだ顔をしてこっちを見ていた。

「庄さん」おせんはくちごもった、「――あんた、帰ったのね」

庄吉は投げるように云った。

「ああ、だが帰らなきゃよかったよ」

おせんにはその言葉が耳にはいらなかった。とびつきたかった、向うでとびついて呉れると思った。からだが火のように熱く、あたまがくらくらするように感じた。

「そしてもう、ずっとこっちにいるの」

「どうするか考えてるんだ、――もういちど上方へいってもいいし、……こっちにこのままいてもいいし、おんなしこった」

「あたし、ねえ」おせんはそっとすり寄ろうとした、「――庄さん、あたし、ずいぶん辛いことがあったのよ」

庄吉はすっと身を退いた。組んでいた腕を解き、凄いような眼でこっちを見た。

「そんなことまで云えるのか、おせんちゃん、おれに向って辛いことがあったなんて、それじゃあおれは辛くはないと思うのか」