Classici giapponesi con furigana
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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
Leggi 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) di 梅崎 春生 (うめざきはるお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 169.810 caratteri · 345 schermate
綱は脇の下にかかっている。まだ若い女らしい。もうすぐ岸に上げられようとしたとたん、死体は綱から離れて、元の水に落ちて行った。嘆声が人混みの中からおこった。――
〈なぜお母さんじゃないかと思ったんだろうな〉
五郎はゆっくりと立ち上った。川口を徒歩で渡る気持はなかった。防風林の方にのぼり、小さな木橋を渡り、また砂丘に戻って来た。眠っている中に陽が翳り、沖の島影も濃くなっている。風が立ち始めた。浪はうねりながら浜に打ち寄せ、静かに、しかし大幅に引いて行く。五郎はかすかな悪寒を感じた。眠っている中に風邪をひいたのだろう。
「だんだん元に戻ってゆくようだ」
五郎は呟いた。睡眠療法でどうにか直りかけていたのに、脱走して思うままのことをした。やはりあのコーヒーを飲んで思ったことは、衝動的なものか、あるいは正常人に戻りたくない気持からだったのか。しかし予定していたことと、実際の行動は、ずいぶん食い違った。
「一体おれは、福の死を確めることで、何を得ようとしたのだろう? おれの青春をか?」
結局おれは福の死をだしにして、女を口説いた。そして猥雑な中年男の旅人であることを確認しただけに過ぎない。