Classici giapponesi con furigana
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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
Leggi 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) di 梅崎 春生 (うめざきはるお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 169.810 caratteri · 345 schermate
海岸沿いの道端に天幕を張って、士官達は一日中ごろごろしていたし、もっこを持って壕を出入する兵隊も、何かのろのろした動作であった。
海沿い道を通り、洗濯物をかかえて、私は丘を登った。居住区の前の樹に、洗濯物を注意して拡げた。上空から見えると、うるさいのである。私は壕の中に入り、衣嚢の中から便箋を出した。私は卓の前にすわり、便箋を前にのべ、そしてじっと考えていた。
暫くして、便箋の第一行目に、私は、「遺書」と書いた。ペンを置いて、前の壁をじっと眺めた。
書くことが、何も思い浮ばなかった。書こうと思うことが沢山あるような気がしたが、いざ書き出そうとすると、どれもこれも下らなかった。誰に宛てるという遺書ではなかった。次第に腹が立って来た。私は立ち上って、それを破り捨てた。
壕を出、丘の上の方に登って行きながら、私は哀しくなって来た。遺書を書いて、どうしようという気だろう。私は誰かに何かを訴えたかったのだ。しかし、何を私は訴えたかったのだろう。文字にすれば嘘になる。言葉以前の悲しみを、私は誰かに知って貰いたかったのだ。
(このことが、感傷の業と呼ばれようとも、その間だけでも救われるならそれでいいではないか)