Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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えのきものがたり

榎物語

山本 周五郎

Leggi 榎物語 (えのきものがたり) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 33.519 caratteri · 67 schermate

Aozora Bunko

うまく脇へそらしちまうのよ」

「話すようなことがないからよ」さわはやさしい眼をした、「おはつさんの知ってるあたしがこのあたしの全部、それだけのことだわ、――ねえ、いまのおすげさんという人のことを聞かせて下さいな」

「三年まえの秋ぐちに、大あらしのなかで山津波が起こったって話、知ってるわね」とはつは話を元へ戻した、「枝川の奥の部落が三つか四つと、葉川村が押し流されて、生き残った者は十人足らずだって、葉川村には河見といって、二百年ちかくも続いた旧家があったそうだけれど、その屋敷もきれいに流されたし、屋敷の人たちはじめ馬一頭も残らなかったって」

「ええ、その話はなんども聞いたわ」

おすげという娘はそのとき、葉川村の米屋という旅籠で女中をしていた。故郷は越後の柿崎というところだったが、女中をしているうちに、客の一人と夫婦約束をした。江戸の木綿問屋の手代で、名は健次、としは二十四。小千谷へ買いつけにゆくときと帰りと、米屋へ四たび泊っておすげと知りあった。

「初め泊ったときは番頭さんといっしょで、番頭さんに顎で使われたそうよ」とはつは話した、「それが二度めのときはもう手代になって、小僧さんを伴れてたのね、すっかりおとなびていて、そして、こんど来たときに話したいことがあるって、おすげさんにそっと耳うちをしたんですって」