Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

Leggi 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 148.519 caratteri · 296 schermate

Aozora Bunko

「私が用向きを聞きます」

「侯には会わせないというんですね」

「用向きを聞きましょう」

六郎兵衛は黙った。それから云った。

「私は非常な大事について、侯じきじきに会いたいと申しいれ、会うから来いという返事で来たのだ」

「その返事は私が出したのだ」

「侯は知らぬというんですか」

「かようなことを、いちいち殿の採否にまつくらいなら、家老や用人はなくて済む、そうは思われないか」

「これは尋常のばあいではない」

「どう尋常でないかを聞きたいのだ」

「侯に会って云いましょう」と六郎兵衛は云った、「さもなければ帰るだけだ」

隼人はするどく彼を見た。

「よろしい」と隼人が頷いた、「それではやむを得ません」

六郎兵衛は眉も動かさずに、左手で刀を取って立ちあがった。

隼人が声をかけると、案内をするために若侍が出て来た。六郎兵衛はその若侍について、廊下を玄関のほうへと静かに歩きだした。そのとき、たぶんようすを聞いていたのだろう、用人の只野内膳が、すり足で追って来た。

「しばらく」と内膳がよびかけた。

六郎兵衛は黙って歩きつづけた。内膳は追いついて、「お上がお会いなされる」と云ったが、六郎兵衛は足を停めなかった。