Classici giapponesi con furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Leggi 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 148.519 caratteri · 296 schermate
「それでどうした」
「それで、つまり」と七十郎は甲斐を見、「ああそうか」といって、手酌で飲んだ。そして云った。
「それで終りです」
「その男はなに者だ」
「知りません」七十郎はまた手酌で飲んだ。
「知らないって」と甲斐が云った。
七十郎は「知りません」と云い、さらにつづけて云った、「私は午すぎに宇田川橋を訪ねて、酒を飲んでいるうちに寝てしまったのです、このうたた寝は私の特技でしてね、ごろ寝をしているといろいろなことが聞けるもんです」
「このうちでもやるか」
「だからこそ、ここに間者のいることも、貴方に知らせることができたわけです」
甲斐は笑った。七十郎はちょっと羞んで付け加えた。
「もっとも、貴方はもう知っておられた、そうでしょう」
「どうだかな」
「貴方にはかないません」
甲斐はまた書きはじめた。七十郎はつづけた。
「ごろ寝をしていると、あの渡辺七兵衛の声が聞えたんです、御家老といったから、相手は新妻隼人でしょう、単純なやつですからね、頼むといわれるとすぐ壮烈な気分になる、よろしい、というわけだったんでしょうな、――必ず仕止めてみせる、などと、たいそうりきんでいました、そこでこっちも眼をさまし、おいとまをしてあとを跟けたわけです」