Classici giapponesi con furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Leggi 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 148.519 caratteri · 296 schermate
「どうしたのだ」と甲斐が云った。
達弥は黙って、膝の上の両手を、こまかくふるわせていた。
「なんのために死ぬのだ」
「申上げられません」と達弥が云った。
甲斐はまたゆっくりと茶をすすった。それから、茶碗を持った手を、膝の上におろし、低い静かな声で云った。
「奥が、達弥にいとまを遣ってくれ、と云ったことを知っているか」達弥は頭を垂れた、「なぜいとまを遣れと云ったか、その理由がわかるか」
「はい」達弥の声は低かった。
「そのために、死のうというのか」達弥は黙っていた。
「その理由のために、おまえは死のうとしたんだな」
「――はい」
頭を垂れた達弥の眼から、涙がこぼれおちた。彼は手の甲でそれをぬぐった。
「達弥、おまえは、このおれをなんとおもう」
「三世までの、ただ一人の、御主人とおもいます」
「そのおれがゆるさぬのに、おまえはなぜ死のうというのか」
「おゆるし下さい」達弥は崩れるように、両手を畳について泣きだした、そして、泣きながら云った、「理由も申上げず、お心にそむいて死ぬのは不忠のかぎりですが、どうしても生きてはいられないのです、どうしても、生きてはいられないわけがあるのです」