Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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かせいのまじゅつし

火星の魔術師

蘭 郁二郎

Leggi 火星の魔術師 (かせいのまじゅつし) di 蘭 郁二郎 (らんいくじろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 151.120 caratteri · 302 schermate

Aozora Bunko

私は少しも空腹を覚えなかったけれど、半ば習慣的に寝椅子から立って、寝癖のついた後頭部を撫ぜながらサン・ルームの食堂に行った。

食堂へ行ってみると、いつもより心もち尖った顔をした諸口さんがタッタ一人、ぽつんと椅子にかけていた。

私たちは無言であった、さっきここで大喀血をしたマダム丘子の姿を思うと、食慾はさらになかった。

「青木さんは」

雪ちゃんに訊いてみた。

「さあ、さっき横臥場へいらしたきりお見えになりませんけど……」

(青木の奴、飯なんか喰いたくないだろう)

と同時に、

(マダムの部屋に行ってるのかな)

一生懸命額を冷してやったりして看護している彼の姿を想像して「フン」と思った。

私たちがもそもそと味気ない夕食を済ましてしまっても、遂に青木は姿を見せなかった。主のないお膳の吸物からは、もう湯気さえ上らなかった。

「雪ちゃん、青木さん知らない」

主任看護婦が廻って来てそういった。

「いいえ、お部屋じゃなくて」

「お部屋にも、マダムのとこにも、まるで見えなくてよ」

「散歩かしら」

「それにしても、長すぎるわ……」

二人はひそひそと囁きあった。

「青木さんいないんですか」