Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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かせいのまじゅつし

火星の魔術師

蘭 郁二郎

Leggi 火星の魔術師 (かせいのまじゅつし) di 蘭 郁二郎 (らんいくじろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 151.120 caratteri · 302 schermate

Aozora Bunko

二ノ三

「出番じゃねエか。愚図愚図してると、又ひどいぞ」

「ウン」

黒吉は、瞬間、親方の顔を思い出して、ピョコンと飛起きた。そして、ベタベタと粘る手の掌を肉襦袢にこすりこすり、周章て楽屋の方へ駈けて行った。

二ノ三

黒吉は、命ぜられた、色々の曲芸をしながらも、頭の中は、いつも葉子の事で一杯だった。

(一度でいいから葉ちゃんと、沁々話したい)

これが、彼の歪められた心に発生て来た、たった一つの望みだった。

彼がもっと朗らかな、普通の子供であったならば、いつも同じ小屋にいる葉子だもの、そんな事は、造作なく実現したに違いない。

しかし、それにしては、黒吉は、余りに陰気な、ひねくれた少年だった。――というのも、彼の暗い周囲がそうさせたのだが――。

そして、早熟た葉子への執着が、堰き切れなくなった時に彼が見つけたのは、あの煎餅のかけらが産んだ、恐ろしい恍惚境だった。

一度こうした排け口を見つけた、彼の心が、その儘止まる筈はなかった――寧ろ、津浪のようにその排け口に向って殺到して行ったのだ。

彼は、そっと、人のいないのを見すまして、衣裳部屋に潜り込み、葉子の小ちゃい肉襦袢に、醜悪な顔を、埋めていた事もあった。