Classici giapponesi con furigana
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かせいのまじゅつし
火星の魔術師
蘭 郁二郎
Leggi 火星の魔術師 (かせいのまじゅつし) di 蘭 郁二郎 (らんいくじろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 151.120 caratteri · 302 schermate
五ノ五
黒吉は、おずおずと、団長の部屋の方へ歩いて行った。
(どんなに呶鳴られても仕方がない)
そう思っては見たが、親方の部屋の仕切りの幕が親方の怒りを受けてか、ひくひくと顫えているようなのを見ると、一瞬、立止って仕舞った。
果して中には、火のような、親方の憤怒があった。
「莫迦、よくのめのめ来やがったな」
黒吉は、のっけから呶鳴られると、却って心は、シーンと落着いて行った。
「親方。俺ア指輪をめっけたんです。あの空を飛ぶ時に……」
「バカいえ。あんな高い所から下が見えるか」
「でも、でも……」
黒吉自身も可怪しいとは思ったが、この際、これ以外に方法はなかった。
「でも確かに見たんです。洗面所の陰に……」
親方は、ジロリと黒吉を睨むと、
「よし」
そういって、わざと跫音を響かせながら、出て行った。
五ノ五
黒吉は、しょんぼりと、突立った儘、親方の遠のく、跫音を、聴いていた。
頭の中は、色々の考え事に、ぽーっと上気し、床板の割れ目に落された眸は、何故とはなく、潤み勝ちだった。
(弱った事になったなア)
彼は、無意識に、脂汗の浮いた掌を肉襦袢にこすりつけた。
(ほんとにあってくれればよいが……いや、ある筈がない)