Classici giapponesi con furigana
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しほんたいへいき
私本太平記
吉川 英治
Leggi 私本太平記 (しほんたいへいき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 116.638 caratteri · 233 schermate
なぜならばさっき親房の使いに呼び返されたとき、すでにそこの御陵には詣で、かたわらの如意輪堂にも詣って、備え付けの堂の記帳に名までしるしていたのである。なんでまたそこへ返って行くのか。
しかし、まもなく人々は、如意輪堂の内へ入った正行が、筆をとってそこの壁になにか書いたのを息をつめて見まもりあった。そして筆を僧へ返すと、正行はすぐ出て来て、もう馬上にもどっていた。
「なにをお書きか?」
と、諸将は入れ代りに堂の内へこみ入って壁をにらむように幾たびも一首の歌をくちずさんだ。――かへらじとかねておもへばあづさ弓、亡きかずに入る名をぞとどむる――、あきらかに辞世だった。
からだの弱かったせいか、今に残っている正行のわずかな書状の筆蹟でも、文字にはどこか弱い病影があり墨色もおおかた淡いといわれている。
しかし如意輪堂の壁へ残して去った和歌の文字には、優しかるべきはずの仮名なのに、何か、やるかたない思いをそこへぶつけたような筆勢と墨の気があった。いちばんあとから入ってその前に立った了現と八木ノ入道とは、顔見合せて、思わず目に熱いものを沸らせずにいられなかった。