Classici giapponesi con furigana
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しほんたいへいき
私本太平記
吉川 英治
Leggi 私本太平記 (しほんたいへいき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 116.638 caratteri · 233 schermate
尊氏は紙燭を手に立って顔をよせた。その一、二行でもすぐわからずにはいられない物である。家祖家時からの鑁阿寺の置文だった。
尊氏は灯をかざして「はて?」と壁の掛物にむかいあった。
これが鑁阿寺の置文なら、世にありえない物があることになる。むかし、鑁阿寺の秘篋からとり出して実物を一見したとき、彼はすぐそのあとで、焼きすててしまっている。あるはずはない。
ところが近年、それを錦小路の邸で見せられたという者がままあった。今川了俊も言い、二階堂や山名なども見たという。思うに、鑁阿寺から副本(写し)か何かをとりよせ、直義がひそかに愛蔵して、一味の重臣に誇り語っていたものであろう。
尊氏はそう解釈してみる。
そしておそらく直義は、戦陣の日も、これを肌身に持っていて、ここの延福寺では、寺僧か誰かに、掛物に仕立てさせ、朝夕、壁にかけて見ていたのではあるまいか。
「……いや?」
そうではないかも知れぬとも思う。直義はこれを用意しておいて、自分が延福寺へ見える日を、いつかはと、ひそかに待っていたのではないか。
家祖家時公の置文を前に、この尊氏へむかって、大望の初志から、兄弟して旗上げにいたるまでの苦労や誓いを「――いまはお忘れか」